2025/11/20 21:31

 鉄器、鉄瓶を使うと鉄分が体に補給されて、貧血の予防になると言われますが、鉄鍋から溶出する鉄量の変化を実験して、論文も公表されてます。

 平成4年の奥州市水沢鋳物まつりで当時、岩手大学名誉教授の及川佳子先生から講演いただいて、県産品の南部鉄器は優れた物であると見解を述べて、鉄玉子一個をヤカン1リットルを沸かすと、沸騰時0.042㎎で10分後0.069mgの鉄分が溶出と測定しました。
 また、南部鉄器協会からの依頼で調理中に鉄鍋から湧出する鉄量の変化を実験しています。
要約は
・鉄の湧出量は調味料に影響され、食酢。トマトケチャップ、食塩の順に多く、特に食酢添加における鉄溶出量が顕著に増加した。さらに過熱時間が長い程、鉄湧出量が増加した。
・鉄の溶出量は油の使用により減少する傾向がみられた。
・鉄鍋で調理した食物中の鉄含量はステンレス鍋で調理した物に比べて多かった。
・鉄瓶、鉄鍋から溶出した鉄の78~98%が体内に吸収されやすい2価鉄であり、中でも食酢添加は98%とほとんど2価鉄でしかも安定性に優れていた。
 以上の結果で、調理における鉄鍋の使用は生体利用性の高い鉄摂取量を増加させ、貧血改善に有効である
と結論づけてます。
 具体的には
鉄鍋で玉ねぎ100gに水50ml加えて5分加熱して調味料無添加の物は鉄の湧出量は0.08mgで、食塩を1%添加すると0.40mg増加した。トマトケチャップ、食酢とそれぞれ添加してみると食酢10%の添加で2.26mgと著しく増加した。一方、油を添加すると低値を示す傾向を示した。
 次回は鉄瓶の鉄の湧出量を紹介します。
 (参考資料 調理中に鉄鍋から溶出する鉄量の変化 日本調理科学会誌Vol36)